■導⼊:売れているのに、なぜファンが増えないのか
商品はよく売れているのに、企業としての信頼やブランド⼒が感じられない。
あるいは、知名度のある会社なのに、新商品がなかなか売れない――。
こうしたズレの多くは、「企業ブランディング」と「商品ブランディング」が混同されていることに原因があります。
この2つは似て⾮なるものであり、担う役割も時間軸も異なります。
企業が⻑く愛され続けるためには、両者を整理し、それぞれの役割を明確に設計することが欠かせません。
■企業ブランディング:信頼と共感を積み重ねる“⼟台”
企業ブランディングとは、
「この会社は、何を信じ、どんな未来を描こうとしているのか」を社会に伝える活動です。
それは“売る”ためのものではなく、“信頼を育てる”ためのものだと言えます。
経営理念、社⻑メッセージ、社員の姿勢、社会への向き合い⽅――
こうした企業の“⼈格”を形づくり、⻑期的に共感を積み上げていく⾏為が、企業ブランディングです。
たとえば星野リゾートは、「旅の幸せを再構築する」という企業哲学を軸に、
どの施設でも「地域×体験価値」という⼀貫した世界観を発信しています。
これこそが、“企業ブランド”の⼒です。

■商品ブランディング:“選ばれる理由”を明確にする設計
⼀⽅、商品ブランディングは、
「なぜこの商品を選ぶべきなのか」を顧客に伝える活動です。
製品機能や価格の優位性だけでなく、その商品を使うことで得られる体験や感情まで含めた価値提案が鍵となります。
つまり、“買う理由”を感情レベルでデザインすることです。
アップルのiPhoneは、単なるスマートフォンではなく、
「創造性を⽀えるライフスタイルツール」としてブランディングされています。
製品の性能を超えた哲学が、商品そのものに息づいているのです。
■両者を結ぶ“⼀貫性”の仕組み
企業ブランドと商品ブランドを結びつけるのは、「⼀貫性」です。
トップのメッセージと現場での発信にズレが⽣じると、ブランド価値は簡単に揺らいでしまいます。
理想的なのは、企業ブランディングと商品ブランディングが次のように役割分担されている状態です。
| 層 | 目的 | 表現の核 |
|---|---|---|
| 企業ブランディング | 社会・顧客との信頼構築 | 「私たちは何者か」 |
| 商品ブランディング | 顧客への価値提案 | 「あなたのために何ができるか」 |
企業が「私たちは何者か」を語り、
現場がその想いを体現した商品・サービスを通じて「あなたのために何ができるか」を示す。
この循環が⽣まれたとき、ブランドは⽣きたストーリーになります。
■まとめ:ブランドとは、企業と顧客をつなぐ“約束”
ブランディングとは、ロゴや広告の話ではありません。
それは、「約束を守り続けるための仕組み」です。
企業は社会と約束をし、商品は顧客と約束をする。
この2つが重なり合ったところに、揺るがないブランドの信頼が⽣まれます。
■次回予告
第3回:「経営戦略としての“デザイン経営”」
―“⾒えるデザイン”から“考えるデザイン”へ。経営にデザインを取り⼊れる時代。

- 荒川 弘也
(あらかわ こうや)
アルファクリエイト株式会社 代表取締役
https://www.alpha-create.ne.jp -
広告代理店・デザインスタジオで経験を積み、30歳で独立。
アルファクリエイト株式会社を設立し、2025年に創業30周年を迎える。
企業理念は「デザインの力で世界を変える」。
デザインを課題解決と未来創造のための技術、そしてコミュニケーションの手法と捉え、 企業や社会の価値向上に寄り添うブランド戦略パートナーとして活動している。




