■導⼊:ロゴを変えても、ブランドは変わらない
多くの企業が「ブランディング=デザインを整えること」と考えています。
ロゴやサイトを刷新しても、思うように成果が出ないのはなぜでしょうか。
それは「らしさ」という軸が明確でないまま、形だけ整えてしまうからです。
ブランドの本質とは、企業が社会からどんな信頼を得ているか。
そしてその信頼を「らしさ」としてどう設計・発信していくかにあります。
■本質:ブランドは“信頼の設計図”である
ブランディングはイメージ戦略ではなく、信頼構築のための経営⾏為です。
企業の理念や⽂化、顧客との約束など、すべての意思決定がブランドを形づくります。
たとえば、星野リゾートの「リゾート運営のプロフェッショナル」という姿勢や、
無印良品の「感じ良い暮らし」という哲学。
いずれも“⾔葉”で定義された「らしさ」を軸に、⾏動・商品・表現が統⼀されています。
■社⻑こそ、最初の“ブランドデザイナー”
ブランドを体現する最初のデザイナーは、経営者⾃⾝です。
社⻑の⾔葉・判断・姿勢が、社員や顧客にブランドメッセージとして伝わります。
経営者の「在り⽅」が組織⽂化となり、それが外部に「信頼」として映るのです。
■実践:企業の「らしさ」を⾒つける3つのステップ
①原点を掘り起こす(FoundingDNA)
・なぜこの会社を始めたのか?
・どんな想いで続けてきたのか?
・最初に喜ばれた瞬間はどんな場⾯だったか?
創業者や⻑年の社員の“語り”にこそ、企業のコアが潜んでいます。
それを「創業物語」として⾔語化することが出発点です。
②他者視点での印象を集める(BrandMirror)
・顧客・取引先・社員に「あなたの会社を⼀⾔で表すと?」と尋ねる
・出てきた⾔葉をグルーピングし、「共通項」と「意外な発⾒」を探る
外から⾒た姿は、ブランドの“鏡”です。
社内の認識とどれだけ⼀致しているかを⽐べることで、⾃社の「認知ギャップ」が
⾒えてきます。
③本質を⼀⾔でまとめる(CoreMessage)
・⾃社を象徴するキーワードを「3語以内」で表現してみる
例:
・星野リゾート→「地域×感動体験」
・良品計画→「感じ良い暮らし」
・トヨタ→「モビリティで世界を動かす」
この⼀⾔が、社内外すべての判断基準になります。
ブランドはスローガンではなく“意思”の表明です。
■経営者への問いかけ
あなたの企業の“らしさ”は何ですか?
それは、社員・顧客・社会の3者に⼀貫して伝わっていますか?
「らしさ」を定義できた企業こそ、変化に強く、魅⼒的なブランドになります。
■次回予告
第2回:「企業ブランディングと商品ブランディングの違い」―“売れる”だけではなく、“選ばれる”理由をどう作るか。

- 荒川 弘也
(あらかわ こうや)
アルファクリエイト株式会社 代表取締役
https://www.alpha-create.ne.jp -
広告代理店、デザインスタジオで経験を積んだ後、30歳で独立。その後、アルファクリエイト株式会社を設立し、2025年に創業30周年を迎える。
掲げる企業理念は 「デザインの力で世界を変える」。デザインを単なる表現ではなく、社会課題の解決、多様性の尊重、未来の創造、知の共有など、あらゆる領域に応用できる“コミュニケーションの技術”として捉えている。
「デザインをすべての人に開かれた力として届けること」「人と社会をより良い未来へつなぐこと」を使命とし、企業の価値創造に寄り添うブランドパートナーとして活動している。

