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「企業価値をデザインする思考」アルファクリエイト株式会社 荒川弘也

BRAND SHIFT

第 2 回

企業ブランディングと商品ブランディングの違い

2025.12.5

―「会社を選ばれる理由」と「商品を買われる理由」の関係―

■導⼊:売れているのに、なぜファンが増えないのか

商品がよく売れているのに、企業としての信頼やブランド⼒が感じられない。
あるいは、逆に知名度のある会社なのに、新商品がなかなか売れない――。
それは「企業ブランディング」と「商品ブランディング」が混同されていることが原因で
す。

この2つは似て⾮なるものであり、経営とマーケティングの接点に位置します。
企業が⻑く愛されるためには、両者を整理し、明確に役割を設計する必要があります。

■企業ブランディング:信頼と共感を積み重ねる“⼟台”

企業ブランディングとは、
「この会社は、何を信じ、どんな未来を描こうとしているのか」を社会に伝える活動です。
それは“売る”ためのものではなく、“信頼を育てる”ためのもの。

経営理念、社⻑メッセージ、社員の姿勢、社会への姿勢――
こうした企業の“⼈格”を形成し、⻑期的に共感を積み上げていく⾏為です。

たとえば、星野リゾートは「旅の幸せを再構築する」という企業哲学を軸に、
どの施設でも「地域×体験価値」という⼀貫した世界観を発信しています。
これが“企業ブランド”の⼒です。

■商品ブランディング:“選ばれる理由”を明確にする設計

⼀⽅、商品ブランディングは、
「なぜこの商品を選ぶべきなのか」を明確に伝える活動です。

製品機能や価格ではなく、体験や感情を含めた価値提案が鍵となります。
つまり、“買う理由”を感情的にデザインすることです。

アップルのiPhoneは、単なるスマートフォンではなく、
「創造性を⽀えるライフスタイルツール」としてブランディングされています。
製品の性能を超えた“哲学”が、商品にも息づいているのです。

■両者を結ぶ“⼀貫性”の仕組み

業ブランドと商品ブランドを結ぶのは、「⼀貫性」です。
トップメッセージと現場の発信がズレてしまうと、ブランド価値は崩れます。

理想的な関係はこうです:

目的表現の核
企業ブランディング社会・顧客との信頼構築「私たちは何者か」
商品ブランディング顧客への価値提案「あなたのために何ができるか」

「あなたのために何ができるか」
現場が「その想いを体現する商品・サービス」を発信する。
この循環ができた時、ブランドは⽣きたストーリーとなります。

■まとめ:ブランドとは、企業と顧客をつなぐ“約束”

ブランディングとは、ロゴや広告の話ではなく、「約束を守る仕組み」です。
企業は「社会との約束」、商品は「顧客との約束」。
この2つが重なり合うところに、ブランドの信頼が⽣まれます。

■次回予告

3回:「経営戦略としての“デザイン経営”」
―“⾒えるデザイン”から“考えるデザイン”へ。経営にデザインを取り⼊れる時代。

荒川 弘也
(あらかわ こうや)
アルファクリエイト株式会社 代表取締役
https://www.alpha-create.ne.jp
広告代理店、デザインスタジオで経験を積んだ後、30歳で独立。その後、アルファクリエイト株式会社を設立し、2025年に創業30周年を迎える。
掲げる企業理念は 「デザインの力で世界を変える」。デザインを単なる表現ではなく、社会課題の解決、多様性の尊重、未来の創造、知の共有など、あらゆる領域に応用できる“コミュニケーションの技術”として捉えている。
「デザインをすべての人に開かれた力として届けること」「人と社会をより良い未来へつなぐこと」を使命とし、企業の価値創造に寄り添うブランドパートナーとして活動している。

その他「企業価値をデザインする思考」