■ 導入:ブランドは「見た目」ではなく“企業の約束”
ブランドは、ロゴや広告のことではありません。
ブランドとは、「この会社は何を大切にしているか」「どんな価値を届けてくれるのか」という、
“お客さまとの約束” です。
デザインは、その約束を“伝わる形”にするための手段。
だからこそ、デザインはブランドと切り離せません。
こうした考えを背景に、経済産業省と特許庁は2018年に 「デザイン経営宣言」 を発表しました。
そこで語られていることは、とてもシンプルです。
「ブランド力を高めるために、デザインを経営の中心に置こう」
つまり、ブランドをより強くするために、デザインを戦略的に使う時代になったということです。
■ デザイン経営とは何か?
デザイン経営とは、“ブランドの価値を、体験として一貫して届ける仕組み”のことです。
ブランドが大切にしている世界観や価値観が、店舗、商品、やり取り、社員の言葉づかいなど、
どの接点でも同じように伝わる状態をつくること。
この統一感こそが、「あの会社らしさ」を形づくります。
■ 実例:ブランドとデザインが一緒に働いている企業
●無印良品
ブランドテーマは「感じ良い暮らし」。
商品、店舗、広告、スタッフの接客まで全てがこの一言につながっています。
→ 世界観の統一が、ブランド価値を育てている例です。
●スターバックス
「心地よく過ごせる空間」をブランドの中心に置き、照明・音楽・におい・カップ・スタッフの雰囲気までデザインで統一。
→ ブランドの“体験そのもの”をデザインしています。
●中川政七商店
老舗としての価値を再定義し、店舗体験・商品開発・言葉の使い方まで整えたことで、ブランドが再び支持されるようになりました。
→ ブランドの再生を“デザインの力”で実現した例です。

■ 中小企業が取り組める「ブランドづくりのためのデザイン活用」
◆① まず、“どんな会社でありたいか”を一言でまとめる(ブランドコア)
これは、難しく考える必要はありません。
例:
・誠実な対応を大切にする会社
・地域に寄り添う会社
・安心を提供する会社
ブランドは、ここから始まります。
◆② ブランディングの視点で“小さな体験”を整える
ブランドの価値は、派手な広告ではなく、日常の体験で決まります。
例:
・問い合わせメール
→ 会社の姿勢が伝わる「最初のブランディング」
・打ち合わせスペース
→ メモ用紙1枚で「準備されている印象」をつくれる
・購入後のフォロー
→ 「あなたを大切にしている」という会社のブランドになる
ブランドは、特別なデザインではなく、日常の積み重ねでつくられるのです。
◆③ デザイン思考で“ブランドらしさ”を磨く
デザイン思考は、ブランドを育てるのに最適です。
1. お客さまの気持ちを想像する
2. どんな価値を届けたいか一言でまとめる
3. その価値が伝わる方法を考える
4. 小さく試す
5. 反応を見て改善する
このサイクルを回すことで、ブランドの軸がぶれず、体験が磨かれていきます。
■ 経産省の「デザイン経営宣言」が伝えていること
宣言の本質は、次の3つに集約されます。
1. ブランドの価値を高める会社は強い
2. 顧客体験を整えることがブランドの競争力になる
3. そのために、デザインを経営の中心に置こう
つまり、デザインとは“ブランドらしさを形にする力”ということです。
■ まとめ:ブランドを育てるためにデザインがある
ブランドとは、会社の想い・価値観・姿勢そのもの。
デザインは、それを 目に見える形や、感じられる体験へ翻訳する道具 です。
・どんな会社でありたいか
・どんな価値を届けたいか
・どんな体験をお客さまにしてほしいか
これらを丁寧に整えていくことが、
長く愛されるブランドの土台になります。
■次回予告
第4回:ストーリーブランディング
―ブランドとは、経営者の“意思決定”と“市場の声”が交差する場所

- 荒川 弘也
(あらかわ こうや)
アルファクリエイト株式会社 代表取締役
https://www.alpha-create.ne.jp -
広告代理店・デザインスタジオで経験を積み、30歳で独立。
アルファクリエイト株式会社を設立し、2025年に創業30周年を迎える。
企業理念は「デザインの力で世界を変える」。
デザインを課題解決と未来創造のための技術、そしてコミュニケーションの手法と捉え、 企業や社会の価値向上に寄り添うブランド戦略パートナーとして活動している。




